外国人を円滑に雇用するコツ 

ビジネス

これまで1000人くらいの外国人をケアしてきました。
日本人とは価値観も文化も風習も違う外国人。
基本的にそれぞれが理想と高いモチベーションをもって来日します。

日本の会社も高度成長期の集団就職のように第二の家族として温かく迎え入れることが制度の活用につながると理解してくれている方がほとんどです。
実習生受入れの仕事をしていた時も、ヒヤリングの段階で「外国人を安くこき使う」という発想の会社は、お引き取り願っていましたので…

それでもトラブルはゼロ、にはならなかったのは何故か。
料を誤魔化していたり、暴力を振るうようなこともなかったのに…

彼らを受入れる日本の会社も、アパートや生活用品を準備、万全の体制を整えていくうちに「お迎えする」という気持ちも出来上がっていく。
そうすると単純な労使関係というより、丁稚奉公のようなウェットな関係になりがちです。
実際、実習生の父兄と近い年齢の従業員なんかが「日本のお母さんですよ」ということもある。
それ自体は悪くないですし、実習制度そのものが「仕事や技術を教えてあげますよ」という国際貢献ということですから、それに沿っているといえばその通りです。

高度成長期に代表される住み込み従業員にも似ているわけですが、昭和の感覚を持ち込んでしまうと失敗することもあります。

いくつか、例をあげてみます。

【1】

働かせてやっている=×

働いてくれている=〇

そもそも日本人の働き手がいない、集まらない、という理由から外国人に来てもらっているわけです。
「雇ってやっている」「仕事を与えてやっている」と上から目線になるのはよろしくありません。
よろしくないのですが「働く場所を与えたうえ、生活にも困らないようにしてやっている」のは事実ですから、そう思ってしまうのでしょうね。
これは大企業でも責任者や職場の雰囲気で起り得るので注意が必要です。

一方、常日頃から感謝や労いの言葉をかけていると「今日もいい汗かきました」とばかりに充実した笑顔を見せてくれます。
昔、ある工場で働く実習生が、昼休みになっても一人で働いていたのです。
交替で昼休憩を取るのかと思ったら、昼休み返上で働いているのです。
当然、社長に抗議を入れようとしたのですが、本人からは「やめて下さい、私が勝手にやっていることです」と止められました。
どうやら、新しい実習生の段取りが悪く、出荷時間まで間に合わなそうだったので、遅れた分を取り戻そうとしていたのです。
「何で君だけがそれを背負うの?」
と聞いたら
「ここは僕の持ち場だし、社長たちも連日忙しくて疲れている。私は若いから大丈夫」
と笑いながら仕事を続けていました。
社長や奥さんに話をすると、少し申し訳なさそうに「本人がそうしてくれる、というので甘えました」と答えました。
普段から、この奥さんは「うちのような会社に来てもらうだけでありがたい」と彼らにねぎらいの言葉をかけていました。

こういう会社では、お互いの信頼関係が出来上がっているため、多少のトラブルがあっても簡単に修正がききます。

【2】
一生懸命さ、やる気がない=×

成果の出る仕組みをつくる=〇

先の事例とやや被るのですが、高度経済成長期を知る経営者の方々は外国人に対して「やる気」を求める傾向があります。

日本よりも貧しい国から来ているので、ハングリー精神があって当然、と思っているのでしょう。
ところが技能実習生として来日する東南アジアでは、どんどんGDPが上がっています。
実習生の祖国として「花形」だった中国も2000年代当初は「残業やっても月給5000円~1万円」という候補者が大半でしたが、ほどなくして帰国した研修生(当時)から「経済特区あたりで働くと、うまくいけば日本でもらうのと変わりませんよ」と連絡をもらって驚いた記憶があります。

経済的な理由で来日したいのは当然なのですが、年を追うごとに「見聞を広めたい」「経験を積んでステップアップしたい」という自己投資型の実習生たちも増えたように思えます。

そういう実習生は度を越した「時間外労働」に幸せを感じませんし、それよりも空いた時間を自由に使って日本を満喫する方を選びます。

ところが、経営者の方々は、そういう実習生を目にすると「やる気がない」「やる気が無いから覚えない、間違える」と大騒ぎします。

モチベーションの違いが仕事に現れるようでは、ビジネスモデルそのものに問題があるわけで、誰がどんな気持ちでやっても一定以上のクオリティが出せる仕組みを作るのが正解なのです。

もし「やる気」を最大限引き出したいのであれば、答えはカンタン。
ちょっと言い方は露骨ですが「にんじん」をぶら下げたらいいのです。

つまり、待遇改善ですよね。
「うちの会社は、よそよりも時給が30%高いらしい」
というのが分かれば、何を言わなくても頑張るでしょう。

とはいえベースアップもなかなか難しいでしょうから無理矢理「やる気」を出させるよりは、誰でも成果が出るような仕組みを作るのが確実です。

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