中小企業が売上と集客をアップするための秘策

ウクライナ・ロシア戦争、新型コロナウィルス感染拡大、円安ドル高は、世界経済に大きな影響を与え続けております。
これまでは影響を受けていたのは企業ばかりで、消費者は「対岸の火事」とばかりに眺めていましたが、物価上昇で危機感を募らせているようです。

物価上昇は企業の仕入れ価格にも反映され、原材料だけではなく、資材などは数か月おきに価格改定されて、ため息交じりの経営者も。

経費の支出を少しでも抑えるため、経営者の皆さんが日夜心身をすり減らし、苦境を打開しようと歯を食いしばる姿には頭が下がる思いです。

しかし、そのために従業員の待遇改善がおざなりになっているケースも見受けられます。
「待遇改善」というと「賃上げ」だけに目を奪われがちですが、それだけではありません。
実はこの頃、企業の従業員からの相談が急増しております。

相談内容はいろいろですが、共通する20項目を紹介しましょう。

採用の際、雇用契約書(雇用条件通知書)をもらっていない

採用する/されるうえで雇用契約を取りかわし、雇用条件通知書を渡すのは 最低限やっておきましょう。
雇用契約を取り交わすことが出来ないのは、会社として「どういうルールで従業員 を採用するか」が定まっていないからです。
コンプライアンスのことだけではなく、誰に何をさせていくらのコストをかける これが決まっていない=経営方針がブレていることにもなりかねません。

タイムカードは着替えてから押すよう命じられている

タイムカードを着替えてから押すのか、出社した段階で押すのか。
実は既に判例が出ています(平成12年3月。最高裁)。
仕事の際、制服や作業服に着替えることを使用者が命じて義務付けているのであれば 「労働時間に当たる」という見解です。
始業時間に合わせて準備するのが当然、というのはブラック企業の典型例です。

15分未満は切り捨て

時間給の労働者に多い問題ですが「うちの会社は30分刻みだから」「15分 刻みだから」という理由で働いた時間が切り捨てられるケースがあります。
切り上げるのは問題ないのですが、たとえばタイムカードでは28分働いた分が 「30分刻み」という理由で対価がもらえないと不公平感が強まりますし、 モチベーション低下の原因となります。
実はこうした計算方法は労働基準法に抵触します。
たとえ10分20分でも「賃金未払い」 となり、労基法違反だけではなく刑事罰となることも。
正解は1分単位での計算ですので、お間違えの無いようお願いします。

有給休暇申請の際、理由が必要 自由に休めない

有給休暇は誰もが自由に取得できる休暇、という認識では50点です。
平成31年の法改正により、使用者(会社)から「いつ休みが欲しいですか?」と 5日以上の有給休暇を取らせなければなりません。
もちろん有給休暇の取得理由に制限を設けてもいけません。

有給休暇の日数が分からない/教えてくれない

従業員が有給休暇の日数を理解していないのは、就業規則や労働契約で 明示していないことを意味しており、有給休暇の発生日も入社日によって違うことも理解していないと思われます。
特に古くから続く中小企業では「有給休暇は病気か忌引きに使うもの」として、働かないのに給料をもらうのは言語道断、と間違った価値観を持ち続けている経営者もいます。

有給休暇以外の休暇(正月・盆休みなど)がない

有給休暇以外の休暇がないこと自体、違法性はありませんが、往々にしてこういう会社は有給休暇の取得率が低く、また従業員が有給休暇の申請をしにくい会社である確率が非常に高いです。
従業員から有給休暇を申請されて「何で休むの!?」「どこにいくの?」としつこく聞くような上司や経営者がいる事業所は、すでにブラック企業の仲間入りです。

給与明細の内容が大雑把/そもそも給与明細が無い

実は労基法において給与明細の内容まで細かく規定されていないのですが、たとえば時間外手当の根拠(その月で何時間はたらいた)が指示していないと 従業員も「何時間はたらいた」「何時間でいくら」と計算できません。
何日勤務して何時間時間外(休日出勤)したか、までは明記すべきでしょう。
給与明細が無い=所得税法違反となりますから、通報案件となります。

時間外手当の計算が不明瞭

ここが不明瞭だと「賃金未払い」となる可能性があります。
時間外の計算は1時間あたりの基本給に対して支払います。
正確に割り出すためには「所定労働日数」「所定労働時間」が必要となり、 根拠になる雇用契約や就業規則が必要となりますから、簡単に1日の労働時間で 割り出して計算することは出来ません(時給、日給月給を除く)。

休憩中にも電話番などの仕事をさせられる

継続する仕事による疲労回復させるために設けられた制度なので、使用者が 休憩時間中に電話応対させるよう命じると休憩を与えたことになりません。
どうしても電話番が必要な場合は、休憩時間を交代制にして、完全に自由な休憩 時間を取らせる必要があります。
また、休憩時間の外出などを制限させることもできないため、どうしても外出を制限させたい場合(何で?というツッコミどころはありますが)は、届出制にとどめることになります。

所定労働日数以上のシフトが組み込まれている

つまり「時間外労働を前提」としたシフトが組まれているケースですが必ずしも違法ではなく、労基署に36協定を申請、許可が下りていることが必要です。
ただし労働時間の延長は原則45時間/月ですので、従業員に時間外労働をさせることを前提とした業務計画は健全とは言い難いでしょう。
そもそも、36協定を毎年更新しているかどうかも怪しいですね。

基本給を計算すると実は最低賃金以下

月給制の会社が最低賃金に準拠しているかどうかの計算方法です。
月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
この計算で最低賃金を上回っていれば、問題ありません。
ただし「1か月平均所定労働時間」を算出するためには、所定労働時間を計算する必要があります。
給与額の設定ですが経営者目線の場合「人件費」というコストとして計算しがちです。
少子化で人材確保がどんどん難しくなる昨今、一定以上の技術や資格、経験を求めるのであれば「最低賃金」ばかりに目を向けるのではなく、良い人材を 確保するためには「一定の対価が必要」という考え方が正しいでしょう。
特に誰にでも出来る仕事ではない職種の場合は「最低賃金」という考え方から 離れるべきです。

昇給/減給の理由が不明

減給だけではなく昇給にも規定がないと、従業員は何を目標に努力すればいいのか分からなくなります。
就業規則などのルールが明確になっていればいいのですが、そうではないから悩むわけですよね。
営業職の成績によって手当や賞与が決まるほか、職能手当など、キャリアアップによって得られる報酬が明確になることで、従業員のモチベーションアップをはかることができます。

仕事がうまくいかないと「やる気の問題」と叱責される

人間はそれぞれ能力や技術が違いますし、その違いが多様性を生み、組織 を活性化させる価値である、というのが組織運営では必要となります。
「やる気の有無」は大事な要素にも見えますが判断基準は主観的、感情的であり ともすれば相手に対する「好き嫌い」「ウマがあうあわない」によって左右される 危険性をはらんでいます。
業務や作業に結果を出すため、仕組み・システム・ルールを最大限構築するのは 経営陣や役職者の務めです。
まずは、つくられた仕組みなどが機能しているか、現在のスタッフにフィットしたものか、検証しながらアップデートしていくこと が重要です。

能力よりも経験年数・年齢が評価の対象となる

能力や技術を評価されないと、優秀な人材が流出する危険性をはらんでいます。
もちろん経験年数と技術・能力が正比例している従業員もいるでしょう。
評価基準が「なに」なのか、全員が明確に理解・把握していないと、従業員の やる気はどんどん低下して離職率も高くなります。
特に「経験」だけが長い従業員は「力の抜きどころ」も分かってきます。
部下や後輩たちが先輩社員の様子を見て「グレーなだけで、あれはサボリだ」と認識してしまうと、やがて同じように手を抜き始めることにも繋がります。

違う部署の仕事を押し付けてくる上司がいる

総務部の仕事を営業部に、工場の仕事を事務に…様々なケースがあります。
部署が違うとはいえ、上司から仕事を命じられたら、従わざるを得ないのは 容易に想像できると思います。
それが正当な指示なのか、上司が自分の都合の良い(サボりたい)ために別の部署の部下を 使っているのか、経営陣・役員は見極める必要があります。
このような問題が起きている職場では、単純に経営者や経営陣の目が届いていないだけです。
目が届かなければ、叱責されることもないわけで、そうなると優秀な人間でもだんだんと怠けるようになり、本来自分がやるべき仕事も立場を利用して部下に回したりします。
「自分も見られている」という意識が無いと、多くの人たちはサボってしまうものなのです。

能力や役職とは関係なく、上司に取り入ってうまくやってる社員がいる

どの会社や組織でも「うまく立ち回っている人」がいます。
技術・経験が豊富、上司にも部下にも上手にコミュニケーションが取れる人は 重宝されますが、なかには「上司には腰が低く、部下には厳しい」人もいます。
場合によっては「パワハラ上司」として組織のチームワークを阻害する場合も あるので、経営者(経営陣)は注意が必要です。

特に権限が大きい「部署の責任者」(例:工場長、営業部長)の場合、部下からの 声は潰されることが多く、実はトラブルやトラブルのタネが大きくなるまで 気づかない場合もあります。
経営陣や役員から、一般従業員に声掛けしただけでは「だんまり」を決め込んで 問題を発見できないことの方が大きいです。
まずは「経営陣・役員⇒責任者⇒部下たち」に指示や通達が、歪曲なく伝わっているか確認するとよいでしょう。
責任者が自分の都合の良い方法で指示や通達を変えていないか、あるいは指示を 上手に噛み砕き、全員に分かりやすく伝えているか。
時々、組織やチームワークが機能しているか、チェックすることが重要です。

上司が帰らないと帰れない雰囲気がある

本来であれば上司が「仕事が終わったのであれば帰れ」と命令すべきです。
それによって時間外手当(人件費)や光熱費を削減できるからです。
「帰ってもいい」という指示や声掛けは「帰らなくてもいい」という意味として 深読みする人もいるので「やるべきことがないなら、帰りなさい。サービス残業は 評価対象になりません」と言い切るべきでしょう。
中間管理職が、そう言い切れないのであれば、組織全体に別の問題が内包されていると考えた方がいいでしょう。

陰で上司や先輩を悪く言う同僚や後輩がいる

面白半分、ジョークの範囲を超えているのであれば困ったことです。
この状況が続けば、おそらく次に入社する人達も同じ状況になります。
本来、やることをやっていれば、目上の立場の人たちを悪く言う人たちはいません。
十中八九、上司や先輩従業員が「ズル」や「規則違反」をしています。
個人の問題なのか、組織の問題なのかを浮き彫りにしないと、 どんどんダメな組織になります。

仮に組織や仕組みに問題があるならば、従業員を刷新しても入れ替えた従業員たちは、やがて同じ運命をたどります。
離職率が高い職場は「仕事がきつい」からだけではなく「会社の何かに大きな不満」を持っている場合がほとんどです。

仕事のスキルよりも人間性が評価対象となる


「好き嫌い」「ウマが合う合わない」が評価基準になっていると思われると、たとえ事実でなくてもそれが「組織のルール」として暗黙のうちに従業員の間で広がってしまいます。
仕事のミスを愛想笑いで誤魔化したり、泣いて謝れば許される…確かにコミュニケーション能力という面では優れているのかもしれませんが、問題を抜本的に解決する手段にはなりません。
「一生懸命な姿勢はいいけど、失敗ばかりする人間はどうすればいい?」
という相談もありますが、その人の能力や技術のせいなのか、業務の仕組やルールが失敗を誘発するようになっているのか、見極めなければなりません。
こういう時代ですから、仕事に対するモチベーションが高い従業員は、それだけで貴重な存在です。
そういう人材を活かしきれないのであれば、会社側に問題がある場合がほとんどです。

違法性を指摘すると「うちは大手じゃないんだから」と一蹴される

もし、経営者がそのような考え方では、相当厳しいと言わざるを得ません。
本来であれば、労働基準監督署なり、しかるべき立場の組織や人が介入すべきだと考えます。
上記にあげた事例を真剣に受け止められない経営者は、危機感が全くないのでしょう。

「従業員が文句を言っても、また別の人間に換えてしまえばいい」
「募集すれば、どうせ簡単に人は集まる」
という考え方なのか、大事なのは経営者やその家族だけであり、従業員や顧客を大切にしていない、という意識が根底にあるのでしょう。

人材は人財という考え方

いろいろな事例をあげさせてもらいましたが、大事なのは従業員を自分の家族と同様に大切な人間として扱えるかどうか、なのです。
たとえば暴風雨、暴風雪警報が鳴りやまない時「今日は無理せず、遅刻してもいいから安全に出社するように」と指示するか「何があってもいつも通りに来い」と圧をかけるか。
公共交通機関のように動いてもらわないと困る業種や職種もあるかもしれませんが(いまは鉄道も事前に運行をやめますが)、従業員の命や健康を犠牲にしてまで通常業務に当たらなければならない仕事は、それほど多くありません。

組織や会社の強みになるのは、商品やサービスだけではなく、それを提供する人だと思います。
従業員を大事に出来ない会社が、顧客を大事に出来るでしょうか。

ひとつでも該当すれば、ブラック企業の仲間入りだと思っております。
ぜひチェックしてみてください。

追記
ひとつひとつは些細なことかもしれませんが、このような部分を是正できないと、人材を確保することはできませんし、契約や取り決めがハッキリしている外国人を雇用してもトラブルになります。
何より、このような部分が是正されにくいことが、日本の労働生産性が低いまま推移している大きな原因のひとつといってもいいでしょう。

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