外国人労働者は断固反対!

group of persons wearing yellow safety helmet during daytime ビジネス
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…という意見をSNSやニュースサイトのコメント欄で見る機会があります。
いつも同じようなパターンで

1.外国人のせいで日本人の仕事が奪われている
2.外国人に頼らなければならないのは、少子化を放置した政府のせい
3.低賃金で働かされる外国人が可哀想

代表的なのは、こんなところでしょうか。
本当にそうなのか、ひとつひとつ、ひも解いていってみましょう。

1.外国人のせいで日本人の仕事が奪われている

簡単に言うと、椅子取りゲームの参加者が日本人だけだったのに、外国人がやってきたので分母が増えてしまった、競争率が上がってしまった、というロジックです。
ここで考えられる「外国人の労働者」は、ホワイトカラーのエグゼクティブではなく、外国人技能実習制度で来日した20代を中心とした若者、そしてブルーカラーの労働者だと思って間違いないでしょう。
ですから、20代~30代を中心とした若年層が、仕事を奪い合っている図式が正しいのかどうか、です。

今年20歳になった(なる)のは2002年生まれ。
今年39歳になる(なった)のは1983年生まれ。
なかなか幅が広いですが、何となく40歳手前であれば、未経験でも20代の人たちと同じスタートラインで仕事をしてもギリギリ大丈夫だと思います。
この世代が、どれくらい生まれてきたのか、確認してみましょう。

この図表は、e-Start(政府統計の総合窓口)から拝借したデータです。
左から、出生人数、出生数(男)、出生数(女)、出生率、出生性比(女子100に対して)、合計特殊出生率となっています。
この期間でのピークは1983年の1,508,687人で、以降は僅かに増減ありますが、徐々に少なくなり、2002年は1,153,805人まで減少します。
数が膨大だと分かりづらいかもしれませんが、1学年の生徒数が150人だった年から比べて115人に減った、という例えだったら分かりやすいですかね。
「それでも、たかだか一クラス減ったくらいじゃないか」と思うかもしれません。
出生率は人口維持に必要な2.0をいずれも下回っています。

では、その先輩や親の世代、つまり昭和40年代やら1970年代、たくさんの子供たちがいて、進学も就職もなかなか大変だった世代は、どうだったのでしょう。

1966年、一瞬、出生数が落ち込みますが、1973年には2,091,983人が生まれ、いちばん少ない年でも1,889,815人ですから、2倍とはいいませんが、それに近い数字の子供たちが生まれています。

かくいう私も昭和40年代、1970年代の生まれですから、歳の離れた人たちの話を聞いていると、クラスの人数も学年のクラスも「半分になった」という印象がありますし、現に宮城県内の高校では統廃合が進みました。

単純に言えば、いま、我々世代が中心となって支えている世の中の仕事を、その半分くらいの人数で回していかなければならなくなります。
技術の発達により、人が要らなくなった仕事や作業もあるでしょうし、いずれは機械化、自動化が進んで人に置き換わる仕事もあるかもしれませんが、減少した分を埋め合わせることは不可能です。

24時間365日、好きな時にコンビニで好きな物を買って食べて、休みの日には映画を観たり、高速道路や新幹線で遠くに出かけて、楽しい思い出をSNSにアップロードする…こういう普段の何気ない楽しみも、いろいろな人が支えているからです。
昭和40年代、1970年代生まれの人間がごっそりとリタイアした時、その代わりになる人間や機械化が進んでいなければ、もしかしたら社会インフラが維持できなくなるかもしれません。

2.外国人に頼らなければならないのは、少子化を放置した政府のせい

政府や自治体は何をやっているんだ!と声が上がったもののひとつとして鮮明に記憶しているのは
「待機児童」の問題です。
我が家の子供も認可保育園に入れない時期があり、収入の大半を保育料に充てなければならず「プラマイゼロか!」と、やりきれない気持ちになったことがあるので、気持ちはよく分かるつもりです。

たとえば、全国の待機児童がゼロになる、子育て世帯に何らかの形で支援が充実する、結婚して子供を育てるうえで不安がないであろう政策が張り巡らされたとしたら、本当に少子化はストップして、どんどん子供が生まれるのでしょうか。

報道で他国の政策、男性の育休取得などがピックアップされ「日本もこうすれば、少子化に歯止めがかかる」などと言われることもありますが、では他国の出生率はどうなっているのでしょうか。
以下の数字は「世界経済のネタ帳」に掲載されているOECDの合計特殊出生率ランキングです。

日本は34位中28位と下の方にランキングされていますが「福祉大国」と呼ばれるフィンランドでも、どっこいどっこいです。
事実婚の嫡子にも手厚い支援があるといわれるフランスは、さすがですね、4位と大健闘しています。
が、ランキングを見る限り、人口増に必要な出生率「2.0」以上の国は、イスラエル、メキシコ、トルコの3か国だけです。
世界全体で見た場合、グローバルノートによれば、調査対象となった200か国のうち、2.0以上の特殊出生率をマークしているのは112か国です。
そして、出生率が高い国々を見る限り、こういう表現をしたら怒られるかもしれませんが、我々日本人のように様々な面で恵まれた、ちょっと甘っちょろい国の人間には、生きるのに厳しいと思う国ばかりです(あくまで個人的な見解ですので、ご容赦ください)。

これらの国々は、水道や電気などのライフライン、鉄道や道路などのインフラが整備されていなかったり、機械化が進んでいないため、何かにつけて「人手」が必要です。
日本だったら、蛇口をひねれば、そのまま飲める水が安い値段で手に入りますが、一部の国では、いまだに何時間もかけて河川や井戸に水を汲みに行かなければ生きていけません。
誰がそれをやるのか、というと、子供たちなんですね。
政府も国民に教育の義務や機会を与えているでしょうけど、死ぬか生きるかの状況ですから、水を汲みに行く方を選ぶ。
水だけじゃ生きていけませんから、煮炊きするための燃料、薪を拾ってこなければなりません。
すると、水汲み以外に、もう一人子供が必要になる。
先進国なら、蛇口をひねって鍋に水を入れて、コンロやIHのスイッチを入れるだけですが、それを半日、一日がかりで何人かで手分けする。
さらに田畑を耕す人手、現金収入を得るための働き手、何人もが必要となります。
だから、しんどい国々の人々は、家計を支えるため、たくさんの子供が必要となるわけです。

もし、そういう国でインフラが整備されて、子供たちが全員学校に通うようになれば、女性でも教育の機会を得られて、どんどん社会に進出します。
社会で一人前として働ければ、少なくとも男性に頼って…つまり婚姻によって生活を安定させる必要がなくなります。
出生率が低下している国々を見る限り、おおむね平和で、それなりに豊かで、女性の社会進出が当たり前で、子供たちの教育も充実しています。
つまり、住みよい社会の副産物として少子化が現れているといってもよいと思います。

3.低賃金で働かされる外国人が可哀想

これについては、一部が誤解されている面もありますが、事実も伝えられています。
まず「低賃金で働かされる」という部分。
低賃金労働が違法、つまり最低賃金未満で働かされる、時間外手当、休日出勤手当、深夜割増など法令で定められた賃金が支払われないのであれば、違法行為ですから完全にアウトです。

あるいは、本当は日給1万円で雇用契約を締結しているのに「それはそれ、これはこれ」とばかりに、日給8000円などに減額して支払えば、最低賃金を上回っていても違法ですね。

外国人労働者の場合、就労するための在留資格(便宜上、ビザと表現します)をもらうためには、入管に雇用契約書を提示、待遇面だけではなく就業場所や職務内容を事細かく提出します。
ブルーカラーの代表格である技能実習生と特定技能の外国人だけではなく、人文知識・国際業務のホワイトカラーでも同様です。
就労できるビザをもらっている=入管として待遇面は労働法令上問題ないことを意味しています。
最低賃金、それに近い待遇では、海を渡ってきた若い労働者が可哀想という心情は分からないでもないですが、それに近い待遇で働いている日本人も沢山いますから、可哀想を軸に論じるならば外国人、日本人を一緒にして問題提起しないと不公平です。

もちろん、一部の会社による賃金未払いなどのトラブルは絶対に許されないことですから、それについては徹底的に取り締まることが必要です。

まとめ

以上の点から「外国人に頼らなければいけない」「外国人労働者をもっと増やしましょう」…と主張するつもりはありません(意外かもしれませんが)。
技能実習生をはじめとするワーカーたちは、特定技能の道が開けているとはいえ、全員が長期間在留するとは限りません。
あくまで欠けた部分を補ってくれる存在、野球やサッカーの試合に出る最低限の人数をそろえるための助っ人なのです。
人口が減った分だけ外国人を入れたとしても、成長に繋がるかどうかは別問題です。
大事なのは「頭数をそろえるにせよ、技術で補うにせよ、その後どうするか」です。

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