外国人を雇用する、その前にやるべきこと

ビジネス

外国人の雇用について相談を受けたり、実際に雇用している方々とお話していると、いろいろ気づかされることがあります。

日本人従業員に対して、やるべきことをやっていない会社が驚くほど多いです。
身近なケースだと「有給休暇」。
いまだに「そんな理由では有給休暇を取ることは出来ません」という会社が少なくありません。

「子供の三者面談」ならOKだけど「新型iPhoneを発売日に手に入れたいからアップルストアに並ぶ」はダメ。
「市役所や銀行に手続きに行く」ならOKだけど「彼氏とデート」はダメ。

そんな会社、多くないですか?
ご存知の通り、有給休暇は働く人の権利ですから、いつでも、誰でも、理由に関係なく取得できます。
これ、某メーカーの書式をそのまま使っているせいもあるのでしょうけど、理由の欄は「私用のため」でいいんです。
余計なことを書く必要はありません。

これは労働基準法第39条に

使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

と定められています。
ただ、
『使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる』ということも定められているので、繁忙期や小売店の土日祝日などは制限される場合もあります。

ほかにも8:30が始業時間なのに「8時には着替えて準備しろ」とか「タイムカードは着替えてから押して、帰る時は着替える前に押せ」とか…
そこそこの大きい企業でもこういうことがあるのです。

何でこういうことが起きるのか。
一番の原因は「就業規則がない」からでしょう。
10人以上の常勤従業員がいる事業所では必要ですが、それ以下の従業員でも作ったらいいのです。
始業時間、終業時間が明記され、所定労働時間、休日などが明記されていて、それをいつでも閲覧できる状態にしておく。

これをやらないのは、単にズボラなのか、あるいは明記しない方が会社にとってメリットがある、そういう風に思っているからでしょう。
あいまいな感じにしておくことで、問題が表面化するのを防ぐ。
日本人従業員にもこんな感じですから、言葉も風習も違う外国人がこういう会社に受入れられたらどうなるか、簡単に想像がつきますよね。

じゃあ、何でこういうことが起きるのか。
これは想像の域を出ませんが、そこを追求しても、おかみがお金を取れないからでしょう。

たとえば、税金。
これは容赦なくとられますし、金額によっては地方の税務署ではなく、国税庁が乗り込んでくる。
申告額が少なくなったりすると、たとえ計算ミスであっても追徴課税だの重加算税がとられたりします。
労働者も給料から所得税が天引きされますし、決算や確定申告などの手続きをみても「絶対に取りっぱぐれのない」システムになっているのが分かります。

一方の労働基準法。
たとえば、労働者がどれくらい働いて、どれくらいの賃金をもらって、どれくらいのお金を所得税で取られたか。
これ、普通は給与明細くれるので、すぐにわかりますよね。
どんなブラックな会社でも、明細くらいはちゃんと頂いていました。
ところが、これをもらえない会社もあるのです。
実際、そういう人と話してビックリしたことがあります。
そんなわけあるか、と思ったんですけど、実はこれ、労基法では給与明細発行の義務までは明文化されていないんですね。
そこまで知っててやらないのではないと思いますけど。
だから、労基署に駆け込んで「うちの会社、明細出してくれないんですよ!」と訴えても「それ、実は法律で定められていないんですよねえ」と困った顔をされてオシマイになるかもしれません。
嘘みたいな話ですけど。

ところが、先の「税」に関する法律、所得税法では所得税法231条において「金額その他必要な事項を記載した支払明細書を、その支払を受ける者に交付しなければならない」と定められています。
1円たりとも間違いが許されない世界ですから、さすがですね。

もし労基署の職員がこれを知ってれば「労基法違反にはならないけど所得税法違反になる、ということは会社も知っておくべきだね」くらいは言うかもしれませんが。

それくらい緩やかといいますか、労働者寄りの法律じゃないんですね。
税金は間違えたり支払い期間を過ぎると追徴課税される、つまり多く払うわけでしょう。
ところが、会社が従業員の給与計算を間違えたりしても「ごめん、次の給料で払っておくわ」くらいで済む。
よく聞く給与未払いの争いも、裁判に負けたらその分を払うだけ(損害賠償請求は、また別の話)。
「従業員の給料を間違ったら、イロをつけて払いなさい」という法律もないですし。

一事が万事、こんな感じですから、雇う方もユルユルだし、雇われる方も知識がない。
そんなところに外国人が来るわけですから、トラブルにならない方がおかしい。

じゃあ、どうすればいいのか、ということになるわけですけど…
こういうのは、中学校や高校で教えるべきなんですね。
何故かと言うと、日本国憲法の26条に「義務教育を受けさせなさい」27条に「働きなさい」30条に「納税しなさい」と書いてあるからです。
子供たちは、いずれ働いて納税するわけですから、そのルールをその時に教えるべきなのです。
だって、社会に出て、自分が勤務する事業所や雇用主が、それらを教える義務はないのですから。

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