コンビニ業界を変えれば日本も変わる

ビジネス

弊社、ワールドウォーカーズは宮城県塩竃(しおがま)市という、東北の小さな港町で営業しております。

地方都市の港町というと、やや荒っぽいイメージがありますが、令和の現在は以前ほど「無頼漢」は少なくなったようです。
ところが、先日、コンビニで衝撃的な場面に遭遇しました。

40代くらいの男性が、店員に向かって怒鳴り散らしているのです。
聞き耳を立てていると、どうやら接客態度に問題があったようです。
パートの店員さんと店長らしき方がしきりに謝っているのですが、怒りはおさまらないのか数分間は怒鳴っていたようです。

後から知ったのですが、怒鳴っていた男性はこの界隈に住んでいるらしく、塩竃市内のスーパーで姿を見かけました。

ここで、感じたのは、二つのことでした。

ひとつは、いい歳をした大人の男性がコンビニ店員に怒鳴り散らす残念さ(さらにいえば、こういう人が生活圏内に住んでいることが、もっと残念です)。

もうひとつはコンビニなど小売業の接客について、です。

多くの方々が賛同してくれると思うのですが、コンビニやスーパーの店員さんたちの接客レベルは、かなり行き届いているといいますか、非常にクオリティが高い。

接客中の言葉を文字に起こせば、もはや高級百貨店と変わらない内容です。
コンビニに限らず、日本の小売業やサービス業の接客レベルは、さすが「おもてなし」を自負するだけはあるな、とあらためて思う次第です。

しかし、ひとつ問題があります。

コンビニもスーパーも、この非常に素晴らしい接客業務を最低賃金に毛が生えたような人件費で続けているのです。

カスタマー目線でいえば、どこに行っても気持ちよい接客サービスを受けられるのですが、働いている方からすれば、安い賃金で高級店並の仕事ぶりを求められる…

一方、海外のコンビニをはじめとする小売業は、かなりフランクというか、先の40代男性だったら烈火の如く怒り出すような接客態度です。

何しろ店員は客がレジの前に立ってもスマホをいじったり、同僚との雑談をやめようとしません。
客が差し出した商品をスキャナで読み取ったら「●●ドル■■セント」とレジの画面を読んで、お金を受け取り、お釣りをトレイに放り出してオシマイです。

馴染みの客が来れば談笑をすることもありますが、基本的には接客というよりも、代金を受け取るだけの「作業員」として働いているといってよいと思います。

日本人から見たら「けしからん」となるかもしれませんが、世界基準でいえば「大事にされたいなら、そういうお店に行けばいいんじゃない?」と言われるだけでしょう。

たとえば、☆がついているかついていないか分からないような安宿と、☆3つ4つのホテルでは調度品もサービスも全然違います。

☆がいくつもついているホテルでは、外から帰ってくると、部屋はちょうどいい温度で綺麗にベッドメイクされ、アメニティも新品に取り替えられている。
まさに「ラグジュアリーな空間」で迎えてくれるので、一日の疲れも癒してくれる。

一方、☆のない、あるいはリーズナブルなホテルでは、フロントのスタッフも愛想が悪く、空調もいまいちどころか窓が開いたままだったり、タオルはぺしゃんこで、アメニティはなし。
かろうじてベッドメイクだけが終わっている…ということもしばしば。
廊下の声どころか、隣の部屋の声も筒抜け、窓を閉めても外の喧騒がいつまでも聞こえてくる。

でも、ちゃんと「価格」によって差をつけているから、文句は言えないわけです。

私見ですが、日本も同じようにすればいいと思っています。
高い賃金を払えないのにレベルの高い接客を求めるから、求人に寄り付かなくなるのです。
ひと昔、ふた昔前までは、コンビニの店員は若者たちにとってアルバイトの「登竜門」的な存在でしたが、いまでは「絶対にやりたくないアルバイトのひとつだ」(男子大学生)という声もあるくらいです。

スマホをいじりながら、は極端にしても、多少ぶっきらぼうな態度だろうが、タバコを探すのに手間取ろうが、割り箸をつけ忘れようが「コンビニはそういうもの」として雇う側、働く側、利用する側も認識したらいいのです。

コンビニだけではありません。
スーパーマーケットなどの小売業も同様です。
レジに並んでいる際「お次の方、どうぞ」とにこやかに声がかかるのは日本だけです。
海外はあさっての方を向いたまま、不愛想に「ネクストプリーズ…!」と促すだけですから。

接客レベルをデ・チューンすることで働く人の間口も広がりますし、結果的にカスハラなども減少すると思います。
そのためにも大手が率先して「もう過剰な接客を求められても、応じません」と宣言する必要があるのですが…いったん王様気分を味わってしまった日本人が、世界基準にシフトできるかと問われたら難しいかもしれませんね。

しかし、遅かれ早かれ「接客問題」は解消されるかもしれません。
深刻な人材不足により、業界は「無人店舗」実現に向けて舵取りを始めました(オールセルフレジ、もしくは支払いそのものが自動で行われ、後払いとなる)。
長い目で見れば、人件費も圧縮できますし、利用客も無人と分かれば、黙って商品を選んで持ち帰るだけになりますから、クレーマーもカスハラも回避できます。

そのかわり、新店オープンには従来型店舗よりもコストがかかるでしょうから、過疎地や集客が見込めないような地域、カスハラやクレーマーが多い地域への出店はなくなり、地方はますます不便になっていくかもしれませんね…

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